学生向け:エシカルな視点で選ぶ銀行・証券会社と賢い少額投資術
はじめに:お金の使い方にも「エシカル」な視点を
エシカル消費と聞くと、環境に優しい商品を選んだり、フェアトレード製品を買ったりすることをイメージする方が多いかもしれません。しかし、私たちの日常生活には、モノやサービスを選ぶこと以外にも、社会や環境に影響を与える可能性のある行動があります。その一つが、「お金の使い方」です。
具体的には、どこに自分のお金を預けるか、あるいはどのように自分のお金を増やすか、といった選択も、広い意味でエシカルな視点を持つことができます。学生の皆さんにとっては、アルバイト代や奨学金、仕送りなど、日々のお金を管理する銀行選びや、将来のために少しずつ資産形成を考えてみたいという場合に、どのような金融機関や投資先を選ぶか、ということが該当するでしょう。
「お金のこと」や「投資」と聞くと、難しそう、敷居が高い、自分には関係ないと感じるかもしれません。しかし、実は学生でも手軽に始められるエシカルな金融の選択肢や、少額からチャレンジできる投資方法があります。この記事では、エシカルな視点でお金と向き合う方法について、初心者学生の方にも分かりやすく解説いたします。
エシカルな金融機関とは何か?
まず、「エシカルな金融機関」とはどのようなものでしょうか。これは、単に利益を追求するだけでなく、社会や環境に配慮した倫理的な基準に基づいて事業を行う銀行や証券会社などを指します。
具体的には、以下のような取り組みを行っている場合があります。
- 特定の産業への融資回避: 武器製造、化石燃料関連事業など、社会的に問題があるとされる産業への融資を行わない。
- 社会貢献型事業への積極融資: 再生可能エネルギー事業、地域活性化プロジェクト、教育・医療関連事業など、社会に貢献する事業へ積極的に融資する。
- 投資における倫理的基準: 顧客から預かったお金を運用する際に、環境(Environmental)、社会(Social)、企業統治(Governance)の要素(ESG)を考慮した投資先を選ぶ、いわゆるESG投資などに取り組む。
- 透明性の高い情報開示: どのような事業に融資や投資を行っているか、倫理的な方針について情報を公開する。
このように、エシカルな金融機関は、私たちのお金が巡り巡ってどのような社会活動に使われるかを重視しています。
学生向け:エシカルな金融機関の具体的な選び方
では、学生の皆さんがエシカルな視点で金融機関を選ぶには、どのような点を意識すれば良いでしょうか。全ての基準を満たす完璧な金融機関を見つけるのは難しいかもしれませんが、できる範囲で検討してみることが大切です。
- 企業理念や方針を確認する: 金融機関のウェブサイトなどで、企業の理念やサステナビリティに関する取り組みを確認してみましょう。「社会貢献」「環境」「倫理」といったキーワードで検索してみるのも良いでしょう。
- 融資・投資方針を確認する: 可能であれば、どのような事業に融資を行っているか、投資信託などの運用方針が社会的に配慮されているかを確認します。ただし、専門的な内容も含まれるため、分かりやすい情報を公開しているかどうかも判断基準になります。
- 提供している商品をチェックする: エシカルなテーマに特化した投資信託や預金商品などを扱っているかどうかも参考になります。
- 利便性や手数料も考慮に入れる: 学生にとって、ATMの利用しやすさや各種手数料、オンラインバンキングの機能なども重要な要素です。エシカルな視点だけでなく、自身の利用スタイルに合っているかも考慮して、バランスを取ることが現実的です。
必ずしも「エシカル金融専門」の機関を選ぶ必要はありません。普段利用しているメガバンクや地方銀行、信用金庫なども、ESGへの取り組みや社会貢献活動を行っている場合があります。まずは、今利用している、あるいはこれから利用を検討する金融機関が、社会や環境に対してどのような姿勢を持っているのかを知ることから始めてみましょう。
少額投資とエシカル:学生でもできること
「投資」と聞くと、まとまったお金が必要でリスクが高い、と感じるかもしれません。しかし、近年では月数百円や数千円といった少額から始められる投資方法が増えています。そして、この少額投資にもエシカルな視点を取り入れることが可能です。
代表的な方法としては、投資信託を通じた投資が挙げられます。投資信託は、多くの投資家から集めた資金を、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品です。その中には、特定のテーマに沿って投資を行うファンドがあり、「ESG投資信託」や「社会貢献型ファンド」と呼ばれる、エシカルな基準で投資先を選定する商品が存在します。
学生の皆さんでも、以下のようなステップでエシカルな少額投資を検討することができます。
- 情報収集から始める: ESG投資や社会貢献型投資にはどのようなものがあるか、インターネットや書籍などで情報を集めてみましょう。興味のある分野(再生可能エネルギー、発展途上国の支援など)に関係する投資先があるか調べてみるのも良いかもしれません。
- 少額投資が可能な証券会社を選ぶ: 最近では、スマートフォンから手軽に口座開設や取引ができ、100円から投資信託が購入できるネット証券などが増えています。エシカルな投資信託の取り扱いがあるかどうかも確認ポイントです。
- エシカルな投資信託を選んでみる: 取り扱いのあるファンドの中から、自身の関心や金融機関の方針に合ったエシカルな投資信託を選んでみます。ファンドの目論見書(投資の目的や方針、リスクなどが記載された書類)を確認することも大切です。
- 無理のない金額で始めてみる: 最初は、毎月定額を積み立てる「積立投資」で、お小遣いやアルバイト代の中から無理なく捻出できる少額(例えば月1,000円など)から始めてみましょう。
エシカルな金融・投資のメリット
エシカルな視点で金融機関を選んだり、少額投資を始めたりすることには、どのようなメリットがあるでしょうか。
- 社会貢献への参加: 自分が預けたお金や投資した資金が、社会的に良い影響を与える活動や企業に使われることで、間接的に社会貢献に参加することができます。
- 価値観に基づいた選択: 自身の倫理観や価値観に合った形でお金を管理・運用することで、より納得感のある消費行動・経済行動ができます。
- 将来の資産形成: 少額でも継続して投資を行うことで、将来に向けた資産形成の可能性が広がります。エシカルな視点を持つ企業は、長期的な視点で見ると持続可能性が高く、安定した成長が期待できるという考え方もあります。
- 学びと気づき: 金融や投資について学ぶ過程で、社会や環境問題、企業の活動などに関する新たな知識や気づきが得られます。
すぐに大きな成果が出るものではないかもしれませんが、将来の自分自身と社会の両方にとって良い影響を与えうる選択肢と言えるでしょう。
実践する上での注意点
エシカルな金融や投資を始める上で、いくつか注意しておきたい点があります。
- 「エシカル」の定義は様々: どのような基準を「エシカル」とするかは、金融機関やファンドによって異なります。自身の価値観と照らし合わせ、方針に納得できるか確認することが重要です。
- 情報の見極め: 「グリーンウォッシング」(見せかけだけの環境配慮アピール)のように、実態以上にエシカルに見せようとする情報も存在します。公開されている情報(レポートなど)をよく読み、信頼できる情報源から判断するようにしましょう。
- 投資にはリスクがある: 投資は、元本が保証されるものではありません。運用状況によっては、投資した金額を下回る(元本割れする)可能性もあります。必ず、投資の仕組みやリスクを理解した上で、自身の許容できる範囲の金額で行うことが大切です。
- 無理なく、できることから: 全ての金融取引をエシカルにすることは難しいかもしれません。まずは、メインバンク選びの際に少し意識してみる、興味のあるテーマの少額投資を試してみるなど、ご自身のペースで、できることから始めてみましょう。
まとめ:お金の選択で、未来を変える一歩を
エシカル消費は、私たちが日々のお金を使って社会や環境に良い影響を与えるための行動です。モノを選ぶ時だけでなく、お金を預ける銀行や、将来のために少額で投資を始める際にも、エシカルな視点を取り入れることができます。
「意識が高い人だけがするもの」ではなく、誰もが無理なく、手軽に、できる範囲で実践できるのがエシカルな金融や投資の考え方です。少額から始められる投資方法も増えていますので、まずは情報収集から始め、将来の自分にとっても、社会にとっても賢い選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。
あなたのお金に関する小さな選択が、きっとより良い未来につながる一歩となるはずです。